二級整備士・稲数の試乗インプレッション・・・BMW M4 GTS編
2025年10月01日
二級整備士・輸入車オタクの稲数 侑哉です。
「メカニックとしての視点」そして「車オタクとしての視点」から私が感じた様々な車の乗り味、
魅力等を忖度抜きで解説で紹介していくコーナーです。
少しマニアックな話も含めて皆様に車のことを知っていただければなと思います。
第六回目は・・・
BMW M4 GTS!
・スペック
エンジン型式 S55B30A
最高出力 500馬力(368kw)/6250rpm
最大トルク 61.2kg・m(600N・m)/4000~5500rpm
種類 直列6気筒DOHCツインターボ
総排気量 2979cc
・「ド級」の過激さ
元から高いパフォーマンスを誇るBMW M4(F82)。
以前レビューした「M4CS」はそこから快適性を削り、よりスポーツ性能に特化させたモデルになりますが、今回レビューする「M4GTS」はさらに快適性をそぎ落し、「究極のスポーツカー」といえる領域に達したモデルになります。
今回のM4 GTSは、「全ての次元が違う」と感じた1台でした。
(エクステリアから既に「次元の違う」雰囲気を感じます)
・ただならぬ雰囲気
まずM4 GTSの特徴として、市販車では初となる「ウォーターインジェクションシステム」が搭載されています。
簡潔に説明すると、吸入空気に水を噴射して、空気の温度を下げるというもの。
通常のエンジンはガソリンを使用してエンジンの冷却も行いますが、それを水で代用することで燃費を最大13%向上させ、より「効率の良いエンジン」となります。
また、温度が低い空気は密度が高く、よりパワーを得ることが可能。
なんとM4GTSは500馬力を発揮します。
(水自体は通常の水道水で問題ないのもありがたいところ)
「極端」に過激であるこの車、スポーツ性能以外は一切皆無です。
フルバケットシート、座席は前後するのみ。
背もたれすら動かず、身体はガッチリ固定されます。
後部座席は無く、見えるのはロールバーだけ。
CSと同様にドアには最低限のスイッチ類しかなく
内装に「豪華さ」を感じるものは見当たりません。
まず正直な感想を言うと、背もたれすら動かないシートは長時間乗るとしんどさを感じます。
後部座席は無く完全2シーター。
リアに人を乗せる事は出来ませんし、ロールバーが視界の妨げとなり、GTウィングも合わさって後方視界は「かなり悪い」です。
しかしここまでの欠点は、1度走ってしまうと「些細な問題」です。
・最高の1台
まず真っすぐに、言葉を選ばずに率直な感想を言わせて頂きます。
「この車はヤバい!!!」
エンジンの振動感から回転数が上がるほど大きくなっていくサウンド、マフラーは震えている実感があり、路面の状況や車の動き全てがハンドルから、シートから、クルマ全体から伝わってくるような、ここまでダイレクトな車は初めての経験です。
サウンドは「最高」の一言。バブリング音は純正というのが信じられないほど「爆音」
しかし良い音で、ずっと聞いていられます。
(マフラーはフルチタン製)
変速する度に「ガン ガン」とギアが入っていく感触があり、その都度「バン」という音が聞こえます
足はコンフォートですら固いですが、跳ねるだけ、というわけではなく速度を上げても地面にしっかり追従します。
カーボンブレーキの効きは言うまでもなく、温まるまではかなり重いですが、操作性は高く慣れてしまえば自由自在に扱えます。
・危険な楽しさ
さて、一度冷静になり車と向き合います。
まずこの車はかなり危険な1台ですが、「危険のベクトルが違う」と感じました。
というのも、「すぐ滑る」「飛んでいきそう」というわけではなく、「楽しすぎて限界まで行きたくなってしまう」というのが正しいです。
エンジンの熱が入れば入るほど車はよりパワーを発揮しますし、タイヤに熱が入るほどよりコーナーを攻めたくなってしまいます。
車の動きは非常にクイックで軽く、自分の手足のように動きます。
当然ドライバーである私もテンションが上がっていき、気が付けば危険な領域に・・・となってしまうほど楽しい車です。
(極限まで軽量化されており、車重は1600キロ、ノーマルよりも30キロほど軽量)
・公道を走るレーシングカー?
「レーシングカー」という言葉は「少し違う」と私は思います。
レーシングカーにはレギュレーションがあり、規制があります。
事実、同型のF82 M4には「M4 GT4」というレース専用グレードが存在しますが、レギュレーションにより馬力は約450馬力、サイレンサーでサウンドも抑えられています。
(FIA-GT4規格に合わせて制作されたグレードになります)
しかし市販車には「レギュレーションは無く」市販車だからこそ際限なくスペックを向上できますし、公道だからこそ、路面のインフォメーションもより大きく感じます。
日本には30台しか存在しない「M4GTS」
2つと存在しない過激すぎるこの1台を体感できるのは30人のみ。
快適性や実用性を全て無くし、車の動き全てが伝わってくるような、「わかる人にしか理解されない」車ですが、逆に刺さった人には「これ以外ない」と、必ず思うような魅力を秘めています。
日本国内にわずか30台、こんなにレアなBMWの試乗インプレッションが出来る環境に強く感謝したことも付け加えておきます。
以上
二級整備士・稲数の試乗インプレッション・・・BMW M4 GTS 編でした。
(私はこの1台を「最高の車」と言い切ります)