二級整備士・輸入車オタクの稲数 侑哉です。
「メカニックとしての視点」そして「車オタクとしての視点」から私が感じた様々な車の乗り味、
魅力等を忖度抜きで解説で紹介していくコーナーです。
少しマニアックな話も含めて皆様に車のことを知っていただければなと思います。
第11回目は…
ジャガー Fタイプ SVR編!!!

・スペック
エンジン型式 508PS
最高出力 575馬力(423kw)/6500rpm
最大トルク 71.4kg・m(700N・m)/3500rpm
種類 V型8気筒DOHCスーパーチャージャー
総排気量 4999cc
・ピュアスポーツの完成形
1975年に生産終了となった「名車」Eタイプの後続車として2012年に登場したFタイプ。

半世紀の時を経て伝説的となった名車の後続車として開発されたこの車は、当然求められるハードルが高いものですがFタイプはそのハードルを簡単に越えていきました。
今回レビューする「SVR」はそのFタイプの中でも最上級モデルになります。
私、個人の思いとしては、自動車整備専門学校時代、某サービスエリアでFタイプのオーナーさんと会話させて頂く機会があり、その時からデザイン、サウンドと憧れの車でもあります。しかも今回はその最上位モデル。
しかし今回はレビュー、例え憧れの車や希少な車であっても色眼鏡で見ずフラットな視点でレビューさせて頂きます。

(登場はコンバーチブルモデルからでした)
・まるで猛獣
まず最初に驚いたのはコールドスタート時の爆音。
文字では表せない様な爆音で、テンションが上がります。
走行時でも当然そのサウンドは健在・・・というよりはここまでサウンドにこだわりがある車は他に見たことがありません。
とは言っても普通の街乗りレベルの巡航速度であれば余分にありすぎる程のトルクで、エンジンは回らないので「吠えまくる」ということはありません。
FタイプSVRの最大トルクは700N・m。これは物凄い数値です。
(比較としてG82 M4コンペティションのトルクは550N・m 640馬力を誇るランボルギーニ ウラカンevoですら600N・m)

理由はエンジンにあります。
・爆弾
エンジンは5.0L V型8気筒、575馬力を誇ります。
単純な馬力比較では640馬力のウラカンevo等には劣りますが、トルクでは上回っています。
理由は「スーパーチャージャー」を搭載しているということ
スーパーチャージャーとは、過給機の一つですが、エンジンの排気を利用するターボと違い、エンジンで直接ベルトを介して加給します。
ターボは構造上どうしても「ターボラグ」という「遅れ」が発生しますが、エンジンで直接回すスーパーチャージャーにはそれがありません。
つまりどうなるのかというと、「とんでもない加速力を発揮します」
正直速すぎて、私もアクセルを全開で踏めませんでした(私が臆病なのもあると思いますが)
特性としては極端なまでの「低回転特化型」
ゼロからの発進はAWDシステムも相まって暴力的です。

(スーパーチャージャーを搭載しているエンジンは、アメリカ車以外だと殆どありません)
・相当「攻めた」乗り味
FタイプはSVRでなくてもかなり攻めた乗り心地になっています。
快適とは無縁と言える乗り心地で、脚は固く、ボディ剛性もカチカチと言わざるを得ません。
しかしそこはスポーツカーであるが故仕方ないところ、むしろそのこだわりは相当のものです。
ボディの剛性はその一つ。サイドパネルはAピラーからテールエンドにかけてアルミニウムによる一体成型。重量は3キロと片手で持ち上げられる程の軽さ、当然剛性も高いです。

(一度走ってしまえばその剛性の高さを感じます)
・無駄が良い
イギリス車なだけあってデザインのこだわりも高いです。
内装の質感は言わずもがな、センターコンソールはかなり高い位置にあり、ダッシュボードの形状など「包まれ感」があります。

スポーツカーにおいて「包まれ感」は重要です。
まるでコックピットに座っているかのような居心地で、居るだけでテンションが上がってしまうものです。
エアコンを起動すると中央からルーバーがせり出してくる演出も。

必要かと言われると正直なところ不要でしょう。
ですがこの車はジャガーでありFタイプです。
このような細かい演出が座っている自分に「プレミアム感」を与えてくれます。
・直線だけではない
FタイプSVRは当然、「ただうるさくて加速が速いだけ」ではありません。
リアタイヤの幅は305、FタイプRは295になるので更に太くなっています。
よって駆動力がより地面にロスなく伝わり、グリップ力も向上。
向上したグリップ力による高いコーナリング性能からロスなく伝わる爆発的な加速力のエンジンの相性は抜群です。

近年の車にありがちなややこしい電子制御はなく構造自体は非常にシンプル。
フロントにエンジンがあって、後輪をメインに駆動するAWD、ギヤは従来のトルクコンバータ式。
そのすべてが高い次元にまとまっていて、「常識的な範囲内であれば」非常に乗りやすく、運転しやすい車です。

似たような乗り味で言うとE92 M3でしょうか。
こちらも同じく構造は非常にシンプルで、常識的な範囲内では乗りやすく、踏めば強力なエンジンが最高の排気音と共に唸る1台です
(レビューはこちら)

・平穏とはかけ離れた車
さて、ここでこの車に対して正直な感想を言います。
乗り心地はシート含め固すぎます。利便性で言うと狭い荷台やシートの後ろに小物置きすらないほどなので厳しいでしょう。
ロードノイズは大きすぎて高速道路では大声を出さないと会話は不可能。
特徴で挙げたエンジンですが、サウンドは爆音過ぎて恐らく1週間もすればうんざりする方もいらっしゃることと思います。
排気音はボタンで抑えられますが、スピードを出すといつの間にか復活します。
後方視界も合流は追い越し車が居ないことを祈りながら走るほど悪いです。
では誰がこんな車を欲しがるのか?
「車が好き」という少年心を忘れていない人、つまり私含むこの世の男たち全員です。
以上
二級整備士・稲数の試乗インプレッション・・・ジャガー Fタイプ SVR編でした。
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(いつかは絶対に乗ると心の中で決めている1台です、インプレッションにて試乗させて頂き、より一層保有したくなりました。)


